むち打ち損傷の三療

むち打ち損傷の三療

1.むち打ち損傷の診察の要点

(1) 事故の状況を可能な限り詳しく把握する。

  ①衝突、追突、側突の別によって損傷されやすい頸椎の部位が異なる。

  ②頸椎のひずみだけでなく、脊柱(特に上部胸椎部)の歪みや捻れに要注意。

  ③上肢の神経根症状や循環障害にも注意し、症状がある場合にはその高位を判定する。 - 神経根レベルの高位診断。

  ④下肢の神経症状、膀胱障害や性機能障害などがある場合には頸椎症性脊髄症を疑い、専門医に委ねる。

  ⑤ホルネル症候群を認める場合にも専門医への受診を勧める。

  ⑥症状の経過を確認する際、天候(寒冷や湿潤)による影響は必ず問う。 - 痺証の存在を知る。

  ⑦症状の増悪因子、軽快因子を確認して補助療法の選択や生活指導の参考にする。

2.ぶち打ち損傷治療の要点

○病因 : 房事過多や久病(慢性病)によって身体が弱ったり、老化によって腎虚が起こり、腎精が不足すると、局所の経脈を滋養できなくなって腰痛を起こす。

○主症 : 腰部の無力感・だるさ・疼痛、足の無力感、疲労すると増悪する。

○随伴症 : 腰部の鈍痛は経過が長い。喜按(揉むと気持ちが良く、揉まれることを好む)。

 

①陽虚 : 精神疲労、腰部の冷え、滑精(精液を漏らすため性行為ができない)、小便清。

②陰虚 : 虚煩(陰虚内熱して心中が悶乱し、精神不安があり、悶々として気が重い状態)、不眠、小便黄、手足心熱〔五心煩熱〕(腎陰虚により、心火が旺盛となり、胸中や手足に熱がこもって苦悶する状態)、口や咽頭の乾く。

○舌象・脈象 : ①陽虚 : 舌質淡、舌苔薄白。脈細で無力。

②陰虚 : 舌質紅、少苔。脈弦細数で無力。

○治則 : 補益腎精、通絡止痛。

○処方 : 主穴 ...... 腎兪、委中、次 ? 。

陽虚には志室、太谿を加える。

陰虚には命門、腰眼を加える。

予備穴 ...... 腰陽関、飛陽、膈兪。

○処方解析 : 腎兪、委中によって腎気を補益、通経活絡をはかる。次 ? にて行血通絡と足太陽膀胱経の経気調節をはかる。足少陰腎経の原穴である太谿と志室を配穴して腎精の補益をはかる。命門、腰眼にて腎陽の補益、腎精の補益をはかる。

○操作 : それぞれ 0.5 ~ 1 寸直刺し、補法を施しつつ、 20 分間置鍼する。同時に灸法を用いてもよいが、腎陰虚で虚熱のある者には灸法は適さない。

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2009年5月24日|

カテゴリー:むち打ちの治療, 過去の講習会