手技療法における経絡治療などの応用

手技療法における経絡治療などの応用

1.疎通経絡療法の応用

(1) 凝りや痛みと経絡 : 経絡の流れが滞るとその経路上に凝りや痛みが発生する。

(2) 経絡阻滞の解決方法 : 疎通経絡療法

A 凝りや痛みの局所に施術する前に、その巡経経絡の末梢部を流注方向に沿ってマッサージし、経絡を流れるようにする。

B 凝りや痛みの中心部経絡上の反応点と経絡上の末梢部の反応点とにエレキバンを貼付して症状を改善する。

C よく用いる経絡と反応点

足の少陽胆経 = 肩井(+)と懸鐘(-)

足の太陽膀胱経 = 膏肓(+)と飛陽(-)

(3) 疎通経絡療法の実際 - 実技

2.特定の症状に対する奇経治療

(1) 頭痛、腰痛、胃のもたれやむかつきなど特定の症状を持つ場合で、速やかにそれを改善したい、またはあん摩施術の補助としたい治療法。: エレキバンを用いた奇経治療

ア ) 奇経療法のあらまし

イ ) 奇経治療の四つのパターン

A 外関(陽維脈)と臨泣(帯脈)= 腰痛や下肢痛

B 内関(陰維脈)と公孫(衝脈)= 胃や腸の症状

C 後谿(陽  脈)と申脈(督脈)= 頭痛や項部痛

D 列缺(陰  脈)と照海(任脈)= 胸痛や呼吸困難

 

(2) 気管支喘息発作の軽減と予防 = 気管支喘息患者で軽度発作時の軽減や発作の予防法としてエレキバンを用いた中医学的補助療法

ア ) 治療点 =  中(任脈)と両側の尺沢か孔最(肺経)。

イ ) 治療法 =

A 通常の場合(呼気性呼吸困難が強い場合)=  中(任脈)をプラスとし、尺沢か孔最(肺経)のうち、反応の強い側をマイナスとしてエレキバンを貼る。

B 虚証の場合(吸気性呼吸困難が強い場合)=  中(任脈)をマイナスとし、尺沢か孔最(肺経)のうち、反応の強い側をプラスとしてエレキバンを貼る。

 

(3) 膀胱経の疎通経絡を応用した坐骨神経痛の軽減 = 腰痛の治療に併用してできるもので、特に下肢の痛みやしびれ、下肢筋のひきつり感などを強く訴える患者の症状を軽減させるためのエレキバン療法。

ア ) 治療点 = 症状が存在する経絡上(胆経、胃経、膀胱経)の上下の反応点を取る。

イ ) 治療法 = 同経上の二つの反応点のうち、上位のものにプラス、下位のものをマイナスとしてエレキバンを貼る。

 

(4) 前立腺炎・前立腺肥大 = 前立腺炎・前立腺肥大などによる排尿時疼痛や違和感・残尿感などの軽減、または改善効果を期待して実施する。

ア ) 治療法 = 三陰交{内果の上方3寸で、脛骨内縁に取る)にプラス、中極{臍の下方4寸で前正中線上に取る}または関元{臍の下方3寸で、前正中線上に取る}にマイナスのエレキバンを貼る。

 

 

(5) 月経痛、月経異常 = 婦人に見られる月経痛・月経痛・過多月経・頻発月経・過少月経・稀発月経などの軽減、または調整効果を期待して実施する。

ア ) 治療法 =

①月経痛・過多月経・頻発月経 = 三陰交{内果の上方3寸で、脛骨内縁に取る)にプラス、中極{臍の下方4寸で前正中線上に取る}または関元{臍の下方3寸で前正中線上に取る}にマイナスのエレキバンを貼る。

②過少月経・稀発月経 = 三陰交{内果の上方3寸で脛骨内縁に取る)にマイナス、中極{臍の下方4寸で前正中線上に取る}または関元{臍の下方3寸で前正中線上に取る}にプラスのエレキバンを貼る。

※ 月経異常に対する治療については、中極や関元を使用する代わりに、陰陵泉(脛骨内側顆の直下の陥中)、または血海(膝蓋骨内側上顆の上方2寸で、大腿の前内側)にプラス、またはマイナスのエレキバンを貼ってもよい。

 

(6) 食欲不振、夏バテ、胃腸虚弱 = 脾胃の変調による食欲不振、夏バテ、胃腸虚弱に対する調整効果を期待して実施する。

ア ) 治療法 = 夏バテ時や胃腸虚弱者に有効。

①胃強・脾弱による食欲不振や食欲欠乏(食欲そのものがなく空腹感はあるが食べたいという欲求が起こらない、消化力はあるし、無理すれば食べられる が、食べれば食欲不振が増悪するもの) = 三陰交{内果の上方3寸で、脛骨内縁に取る}にプラス、陰陵泉{脛骨内側顆の直下の陥中で、脛骨の内縁を指先で上方へ向けて撫でていくと指が止まる所に取 る}にマイナス、足三里{外膝眼の下方3寸で、下腿の前外側に撮る。脛骨粗面直下と腓骨頭直下を結んだ線上の中点で圧迫すると最もよく響くところみに取 る}にマイナス、衝陽{足背で第2・第3中足骨底の会合部に取る}にプラスのエレキバンをそれぞれ貼る。

②脾強・胃弱による食欲抑制や食事拒絶(食欲は旺盛であり、空腹感があまりなくても食べたいという意欲が非常に強く食べてしまう。しかし、胃の働き が悪く消化力もないため、食べると胸やけ・胃部膨満感・胃痛などが起こるため、自主的に食欲を抑制し、食べることをできるだけ拒もうとするもの)=三陰交 {内果の上方3寸で脛骨内縁に取る}にマイナス、陰陵泉{脛骨内側顆の直下の陥中で、脛骨の内縁を指先で上方へ向けて撫でていくと指が止まる所に取る}に プラス、足三里{外膝眼の下方3寸で、下腿の前外側に撮る。脛骨粗面直下と腓骨頭直下を結んだ線上の中点で圧迫して最もよく響くところみに取る}にプラ ス、衝陽{足背で第2・第3中足骨底の会合部に取る}にマイナスのエレキバンをそれぞれ貼る。

※ 実際の治療においては、男性は左側、女性は右側を治療側にすることを基本的とし、効果が少なければ両側を用いる。

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2009年5月24日|

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